座敷牢群島

日頃触れ合った様々な文化についての備忘録となっております。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

埼玉県立近代美術館「版画の景色 現代版画センターの軌跡」

「現代版画センター」についての詳細を知っているという方は戦後美術について相当通暁していると思われる。センター活動時には生まれてすらいない私は展覧会の名前を聞くまでは存在すら知らなかった。 知らないとはいえ、埼玉近美で現代美術を取り上げるとき…

吉村昭『戦艦武蔵』

吉村昭『戦艦武蔵』(1971年、新潮文庫)[単行本 1966年、新潮社] 漁具に用いられる棕櫚の繊維が市場から姿を消し、漁師たちが異変に気がつく場面から作品は始まる。安定供給されているはずの棕櫚が消えることに漁師は首をひねるばかりだ。この棕櫚を買い漁…

小泉義之『あたらしい狂気の歴史 精神病理の哲学』

小泉義之『あたらしい狂気の歴史 精神病理の哲学』(2018年、青土社) この本が追うのは「狂気」とは何かという問いではなく、「狂気」を取り巻いてきた精神医学と実践の歴史である。精神医学への筆者の強い疑念は、「はじめに」で直接的に表現されている。 …

海音寺潮五郎『二本の銀杏』

海音寺潮五郎『二本の銀杏(上・下)』(1998年、文春文庫)[初出:昭和34年10月21日~36年1月6日「東京新聞」夕刊] 昭和の時代小説作家といえば必ず名前が出るのが海音寺潮五郎であるが、読んだことは無かった。手にとって見ると、重苦しさを感じさせない文…

王 銘エン『棋士とAI ―― アルファ碁から始まった未来』

王銘エン『棋士とAI ―― アルファ碁から始まった未来』(岩波新書、2018年) 囲碁棋士の立場からアルファ碁の実像、AIと人間の関わり方について迫った一冊。書店で『囲碁AI新時代』を立ち読みしたときは囲碁素人では流石に読むのが辛いと思ったが、本書は囲碁…

国立科学博物館「南方熊楠 -100年早かった智の人-」と21_21 DESIGN SIGHT「野生展」

2017年は南方熊楠生誕150年であり、表題に挙げたように年末から南方熊楠関連の展覧会が東京で2つ開催されていた。国立科学博物館「南方熊楠 -100年早かった智の人-」は行っておいて損はない。順番としては、まず「野生展」を見てから、後日「南方熊楠」を…

倉本一宏『藤原氏 権力中枢の一族』

倉本一宏『藤原氏 権力中枢の一族』(中公新書、2017年) 藤原氏がいかに権力を握り続けたかをコンパクトにまとめた一冊だが、筆者が「はじめに」で語っている野望は意外にも大きい。藤原氏の権力掌握の様相のなかに潜む大きな意義について筆者は以下のよう…