座敷牢群島

日頃触れ合った様々な文化についての備忘録となっております。

熊本市現代美術館「熊本城×特撮美術 天守再現プロジェクト」展

 先日、初めて熊本市を訪れた。少し熊本市街地を散歩した限りでは、地震の影響を感じさせるような場所は多く無かった。

 しかし熊本の多くの文化財にはまだ影響が残っている。横井小楠の四時軒や徳富蘇峰旧邸には未だに立ち入ることができない。そして、何よりも地震の爪痕が顕著に残るのが熊本城であろう。熊本城の被害は思っていた以上に甚大で、まだまだ充分な修復には時間がかかりそうだった。崩れた石垣は生々しく地震のエネルギーの恐ろしさを見るものにつきつけている。

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 熊本城跡からほど近くにある熊本市現代美術館では「熊本城×特撮美術 天守再現プロジェクト展」が行なわれていた。天守閣の復旧には3年、熊本城全体の復旧まで20年かかるという状況のなかで、ミニチュアとして熊本城を再現することで復興の機運を高めようというプロジェクトである。
 
 再現された熊本城は極めて丁寧に作られている。一流の技術を持つプロたちが全力で取り組んだミニチュアは、当たり前だが極めて精巧であり、建築が持つ温かみや曲線美を忠実に再現している。特撮の知識はまったく無い私だが、思わず覗き込み唸ってしまう。阿蘇神社の楼門も再現されておりこちらも美しく再現されている。

 

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 城と同時に熊本城下の街並みも再現することで、熊本市民と熊本城が持っていた紐帯の強さも感じさせている。街のシンボルとしての熊本城という存在の大きさを感じさせる。地元の子どもたちも多く訪れており、自分たちが見たことのある町並みが小さくなっている姿に興味津々の様子であった。

 

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 作成過程についても詳しく紹介されている。精密な部品や塗装の紹介は素人でも感嘆する。ミニチュア作成の過程を追うドキュメンタリー映像も美術館では流されていた。単に熊本城の外見を再現するのではなく、素材が持つ色ムラや内部の複雑な構造まで再現しようとする姿勢にはプロの意地を見ることができる。地元のボランティアによる街並み作成への協力する姿を見ると、確かにこのプロジェクトが復興への機運を高める一助になっているのかなとも思った。

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 再現された熊本城や街並みを見ることで、その精密さに感嘆しながらも復興計画まで思いを馳せることができた。いつかミニチュアのように復活した熊本城の姿を見に来ようと思いながら美術館を後にした。