座敷牢群島

日頃触れ合った様々な文化についての備忘録となっております。

宮沢輝夫『秋田犬』

宮沢輝夫『秋田犬』(文春新書、2017年)

 

 タイトルの通り秋田犬について書かれた一冊。昨年末というタイミングで出されたのは戌年を意識したのだろうか。

 第1章は秋田犬の世界での知名度の高さについて、第2章では秋田犬という犬種がいかにして産み出されてきたのかという過程について、第3章では忠犬ハチ公を巡るエピソードについて、第4章では秋田犬が今後いかにして存続していくかについて語られている。

 個人的に印象に残ったのは第2章。明治期の闘犬ブームで土佐犬やマスティフ、シェパードとの交配が進んで秋田犬は「新秋田」となり、現在秋田犬と呼ばれるような姿の犬はほぼ消滅しかかったという。さらには戦中期には大食いであり軍犬としての適正もそこまでなかった秋田犬への風当たりは強くなり絶滅の危機を迎えた。愛犬家たちはなんとか国粋主義の文脈に乗せながら手練手管を尽くしてなんとか秋田犬の命脈を保ち、戦後に秋田犬を一犬種として確率させようとする。秋田犬を巡る人々のドラマはなかなか壮大で面白い。

 私自身は犬を見ると怯えてしまうほど動物嫌いなのだが、読後にはなんだか秋田犬と触れ合ってみたくなったのでなかなかいい本だったのだろう。