座敷牢群島

日頃触れ合った様々な文化についての備忘録となっております。

達日出典『八幡神と神仏習合』

達日出典『八幡神神仏習合』(講談社現代新書、2007年)

 3月に宇佐八幡宮を訪ねようと思い、歴史背景が書かれた本を手に取った。八幡神の成立と伝播について書かれた新書である。

 八幡神神仏習合を先導していたことをちゃんと読んだのは初めてだ。仏教や道教の要素を含んだ新羅の神が渡来人とともに豊前にやってきて、山岳信仰と結びつき日本化するかたちで独自の仏神として八幡神が発展した。仏教要素を大いに含んだ八幡神本地垂迹の引き金となり仏と神々の習合を引き起こしたという。時の権力に気に入られながら、京都へ影響力を伸ばし、石清水八幡宮鶴岡八幡宮ができていく。九州に生まれた特殊な「仏神」である八幡神が日本全国へと広まっていく過程を追っていくのはなかなかおもしろい。「神身離脱」「護法善神」といった基本ワードについても改めて知識を整理できた。

 元来「仏神」として育まれた宇佐の八幡神が特異性を持っていることを再三指摘しているところに筆者の宇佐八幡宮への愛が見て取れる。基本的に宇佐八幡宮の勧請である他の八幡宮廃仏毀釈によって本来の雰囲気を失ったことと異なり、宇佐はまだまだ仏教・道教八百万の神を全て取り込んだような雰囲気を保持しているという。訪れるのが大変楽しみになった。