座敷牢群島

日頃触れ合った様々な文化についての備忘録となっております。

日比谷図書文化館「ARTISTS MEET BOOKS 本という樹、図書館という森」展

 小学校の頃は毎日のように町立図書館に通っていたし、高校・大学の頃は学校図書館に入り浸っていた。当然、大学院では図書館の地下書庫に張り付いていた。溢れんばかりの本棚に囲まれていると精神が高揚する。

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 日比谷図書文化館で行われている「ARTISTS MEET BOOKS 本という樹、図書館という森」展に行ってきた。若林奮のアーカイブを参照しつつ、DOMANI展に出店している寺崎百合子、宮永愛子小林孝亘、蓮沼昌宏、折笠良が本・図書館をテーマにした作品を出展している。印象的な作品だけ紹介する。

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  宮永愛子の「open book」。この人の作品は個人的には詩的すぎて苦手に感じることも多い(当然狙い通りなので流石だとは思う)のだが、この透明な本は「痕跡を閉じ込めている」ような感覚を惹起させてなかなか面白い。

 

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 蓮沼昌宏はキノーラといわれる原始的な動画生成装置を何点か出展していた。パンフレットによると映画の先祖であるというこの装置は、蓮沼が言うように確かに「本」である。ハンドルを回すと 「本」が動き出し、アニメーションが生成される。純粋に楽しい体験としてキノーラを回すことで、本・映画・アニメといったメディアの共通性を感じることができるような気がした。

 折笠良のショートアニメーションは引き込まれるものだった。石原吉郎ロラン・バルトの言葉に真正面から向き合った記録として、アニメーションの新たな可能性を感じさせる。

 3Fの公共図書館フロアには藤本由紀夫の作品が点在している。本棚や閲覧席に作品が共存している。作品は実際に手に取れるもので、紙を捲る音を楽しむ作品はなんとも心地よい。宝探しのように図書館を探っていき紙を捲る感覚は、まさに図書館の原体験かもしれない。ただただ本棚を眺めながら歩き回り、気になった本を手にとってめくる。情報の横溢を味わうことこそが図書館の魅力だと思っているので、お目当ての本を借りるだけだったり自習室代わりに使うだけだったりすることは図書館の魅力を半減させているように思う。